2014年6月16日月曜日

湯町かま

  玉造温泉に湯町窯(ゆまちがま)という窯がある。
  といっても、その存在を知ったのは今回が初めてなのだが。
 特徴は、現窯元の親か祖父さんあたりが柳宗悦、バーナードリーチ等とともに民芸運動に参加していたというところからくる、暮らしの器の美しさといわれている。
 ということを知ったのは、お嫁さんが旅行に行ってきたお土産にと湯町窯の「ぐい呑み」を買ってきてくれたからで、これまでの私のコレクションにはない逸品なのですぐに気に入った。
 どこが良いなどとあれこれ解釈するでなく、要するに気に入った。事実、お酒も美味しかった。
 以前に、割れてしまったので捨ててしまったが、私は神戸の元町で見つけた瀬戸物の「楊枝入」をぐい呑みに使っていたことがある。
 「地酒を楽しむ会」に持参したことがあるが、酒器に一家言のある誰もが「楊枝入」とは言わなかったのが愉快だった。
 言いたいことは、高いからよいとか誰々の作だからよいというのでなく、自分が使って美味しいかどうかである。

  民芸運動というと、五条坂に窯を開いた河井寛次郎がいるが、その河井が文芸文庫「火の誓い」などで「最も美しい村」だと公言して幾度も通ったという集落、京都府精華町植田の集落が我が家から遠くない場所にある。
  すぐ近くまで立派な道路が延びているが、雑木林の緩衝地帯に守られて、今でも往時を想像させる静かな集落である。
 こういう景観の中に心を解き放して河井が作陶に励んだのかと思うと、何か解るような気もした。
 何事につけ、目先の売買価格で物事を評価する傾向があるが、景観は大事な大事なものだと思う。
 重ねて言うが、湯町窯のこのぐい呑みは気に入った。

 息子とお嫁さんが富本憲吉記念館に行ってきたらしい。閉館され荷物の運び出しの最中だったらしい。
 志賀直哉の遺品といい、奈良県下のこういう品々はみんな個人任せにされてきた。そして、時とともに散逸しつつある。悲しい国ではないか。

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